月経前の不調
2024.01.31
多くの女性は、毎月月経前後にある程度の身体的、精神的不調を経験します。今回はその中でも、精神的な不調が強い、月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)
についてです。
PMSとPMDD
月経(生理)に関する不調として、PMSという言葉は聞いたことがあるかもしれません。PMSはPremenstrual Syndromeの略で、日本語では月経前症候群と言います。PMSは、月経(生理)が始まる前に多くの女性が経験する一連の身体的および心理的症状を指します。これらの症状は、月経周期の後半期に現れ、月経が始まると通常は軽減または消失します。月経に関する病気として、もうひとつPMDDというものがあります。PMDDはPremenstrual Dysphoric Disorderの略で、日本語では月経前不快気分障害と言います。PMDDは、PMS(月経前症候群)の一種ですが、精神症状がより強いことが特徴です。この精神症状は日常生活に影響を与え、時には自殺を考えることもあるくらい強い影響を与えることがあります。
PMDDの機序
PMDDの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、ホルモンの変動、特にエストロゲンとプロゲステロンの変化が重要な役割を果たしていると考えられています。また、セロトニン(脳内の神経伝達物質)のレベルの変化も、PMDDの症状に関与している可能性があります。
PMDDの疫学
PMDDは女性の2-8%に起こると言われています。また遺伝的な関連があると言われています。ADHDなどがある場合はPMDDの有病率が高くなることが分かっています。
PMDDの症状
PMDDとPMSの両方において、症状は通常、生理が始まる7-10日前から始まり、生理の最初の数日間続きます。
症状には以下のようなものがあります
気分の変動 – 落ち込み、イライラ、不安、緊張が生じる
集中力・思考力の低下 – 集中するのが難しい、上手く考えられない
疲労感やエネルギーの欠如 – 普段よりも疲れやすく、活力がない
睡眠の変化 – 睡眠過多または不眠。
食欲の変化 – 過食、特定の食べ物(主に炭水化物)への渇望
身体的症状 – 胸の張り、関節や筋肉の痛み、頭痛、体重の増加
PMDDではこのような症状が生じ、生活に支障を来します。
PMDDはどのように治療するのですか?
PMS・PMDDでは、経口避妊薬や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)、漢方薬、抗うつ薬、抗不安薬といった薬が用いられます。当院では抗うつ薬(SSRI、SNRI)を中心に、抗不安薬や漢方薬を追加で処方しています。抗うつ薬は症状のある期間だけ、少量内服します。また、PMDDは生活習慣やストレスレベルによって症状の強さが変化するので、食事や運動などを見直したり、ストレスをコントロールする方法を学ぶことも重要です。
さいごに
多くのPMDD(月経前不快気分障害)の方が、「こんなことで」とか「自分だけじゃないんだから」と我慢しています。ここで説明したような症状が軽くなったら生活が楽になるのにな、と思うようでしたら一度医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。