不注意の症状が中心の注意欠如・多動性症(ADHD:Attention deficit hyperactivity disorder)
2024.01.18
ADHDというと、授業中に席に座っていられないで騒ぎ回る男の子、というイメージがあるかもしれません。これだけがADHDではなく、実はこの教室にはもう一人、授業に集中できずにぼーっとしている女の子、というもう一人のADHDがいます。これが、今回のテーマです。
ADHDの3タイプ
現在の精神医学では、ADHDは、多動性-衝動性優勢型、不注意優勢型、不注意と多動・衝動の複合型の3タイプに分類されます。多動性-衝動性優勢型は男性に多く、不注意優勢型は女性に多いです。今回は不注意優勢型を取り上げます。不注意優勢型のADHDは、以前は注意欠陥障害(ADD:Attention Deficit Disorder)と呼ばれていたものです。
不注意優勢型のADHDの特徴
どのような特徴があるのか?(症状とかではなく)
先述したとおり、女性に多いです(男性に見られないわけではありません)。また、多動性-衝動性優勢型や不注意と多動・衝動の複合型に比べて、大人になるまで気が付かれにくいというのも特徴です。
不注意の症状には以下のようなものがあります。
- 細部に注意を払わない、または学業課題やその他の活動を行う際にケアレスミスをする
- 学校での課題または遊びの最中に注意を維持することが困難である
- 直接話しかけられても聴いていないように見える
- 指示に従わず、課題を最後までやり遂げない
- 課題や活動を順序立てることが困難である
- 持続的な精神的努力の維持を要する課題に取り組むことを避ける、嫌う、または嫌々行う
- しばしば学校の課題または活動に必要な物を失くす
- 容易に注意をそらされる
- 日常生活でもの忘れが多い
また、月経前の不調、過眠や不眠といった睡眠のトラブル、アルコールの飲み過ぎなど、他の問題を同時に抱えていることも珍しくありません。
治療法
ADHDの治療には薬物療法と非薬物療法があります。日本で使われているADHDの治療薬は、メチルフェニデート(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン(インチュニブ®)、リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ®)の4種類で、このうちリスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ®)は小児のみ適応がある薬です。いずれもADHDを治すのではなく、症状を抑える薬です。
非薬物療法には環境調整、ソーシャルスキルトレーニング、認知行動療法などの精神療法・心理療法といったものなどがあります。最近はコーチングといった手法も用いられるようになってきています。
さいごに
不注意優勢型のADHDは、他のタイプに比べて気付かれにくく、思わぬ不調の原因であることも少なくありません。自分の子供のことでADHDについて調べて、自分もそうかもしれないと受診される方もいます。気になる症状があったりしたら、一度医療機関で相談をしてみてください。